078Chapter2Business Methods立地を再検討 企業の立地は、生産活動に便利であったり、消費者に近かったり、従業員の雇用が容易であったり、などといった必然性があって決定されたものです。ただ、そうした立地上の優位性は、企業自身の生み出す製品やサービスの変化や、法律や雇用情勢など周囲の環境変化に伴い、必ずしも続いていくものではありません。従って、本社、店舗、製造拠点など、企業の拠点それぞれについて、現在求められている条件を十分に考慮し、それに対して現在の立地が好ましい状態であるのかを再検討する必要があります。立地に求められる機能はさまざま 製造拠点、本社、店舗などのそれぞれの立地を検討する際に特に留意すべき点は以下の通りです。製造拠点では、まず原材料の調達の容易さや、下請先、外注先との距離の検討が求められます。本社(本部機能)は、本社で対応する顧客や関係先とのアクセスに加え、情報収集の拠点となっているか、他拠点との連携に不便はないか、金融取引に都合はよいかなどがあげられます。店舗(支社)は、顧客や販売先との関係、ライバルの立地が大きく関係します。あわせて、自社店舗間の距離も検討する必要があります。店舗の密度が高いと顧客からのアクセスはよくなりますが、自社の拠点間で顧客の奪い合いが起こること(カニバリゼーション・共食い現象の発生)も考えられるからです。自社店舗間の距離を検討するためには、店舗ごとの商圏(集客できる範囲)と、その商圏内の人口や特性を把握することも必要となります。 さらに、こうした個別の課題に加え、法律上の規制、人材確保の問題、交通網の変化、商圏人口・特性の変化といった外部環境の変化も考慮しなければなりません。また、周辺の環境への配慮も都市部に限らず重要になってきました。環境変化に合わせて立地を最適化 一方、企業には歴史があります。既存の従業員や目に見える資産の蓄積だけではなく、地域や地元企業とのつながりも、無視することはできません。また、多くの企業が、創業の場所を心のよりどころとして、非常に大切にしています。ただ、企業の永続性を考えた場合には、場所にこだわりすぎるのは得策ではないかもしれません。創業時にはその場所が最適であっても、環境は変化します。特に東京では環境変化が激しく起こっています。 従って、製造拠点、本社、店舗などのそれぞれの立地特性と求められる機能を検討したうえで、海外への展開も含めて、拠点の再編成も、戦略のひとつとして考えるべきでしょう。本店、店舗、工場など、自社の立地特性(交通の便、商圏人口)を理解している2-4
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