HTML5 Webook
60/233

060Chapter1Business Methodsバリューチェーンとサプライチェーン ハーバード大学のマイケル・ポーター教授が提唱した価値連鎖(バリューチェーン)の概念を用いて、企業の業務の流れと外注の流れ(サプライチェーン)を模式化すると、右図のようになります。この流れの一部に能力の劣るボトルネックがある場合、他の部分がいくら優れていても、最終的な企業の能力は最も弱い部分と同じ大きさになります。右図のA社の例では、企画部門、製造部門、間接部門などは100の能力があっても、販売部門が50の能力しかないため、結局は50しか生産も販売もできず、その他の経営資源が無駄になってしまいます。こうした問題を解決するには、自社内で能力増強を行う以外に、業務の一部を外注する方法があります。A社の場合、販売代理店B社に50の販売を委託すれば、その他の部門はフル稼働で100の能力を発揮できます。 また、こうした量的補完を目的としたものだけではなく、他社から納入したほうがより高性能であったり低価格であったりする場合に質的補完のために外注するケースも検討すべきです。例えばC社の工場のほうが低価格での生産が可能であれば、外注することでコストを削減することができます。 外注自体は、目新しいものではありません。例えば下請企業や外注先への発注、販売代理店網の構築も、製造工程の一部や販売チャネルの一部を外注していると考えることができます。ただ、近年、技術やノウハウの専門性が高まってきているほか、コールセンターや総務部門など間接部門の業務委託を引き受ける企業も増えていることから、以前よりさらに外注の検討の余地が高まっていると考えられます。メリット、デメリットを考慮し、業務を峻別 外注のメリットとしては、経営資源をコア事業に集中できること、需要急増への対応が容易であること、その反面として需要が急減した時のリスク軽減、自社にないノウハウによる品質向上やコストダウンなどがあげられます。ただし、外注がすべて正しいわけではありません。相手のあることですから、どうしても品質や納期などのコントロールが課題になりますし、重要な情報や技術が漏えいする可能性も出てきます。委託先が事業から撤退したり倒産したりすると、自社の業務に大きな影響が及びます。また、一度外注すると既存のノウハウが散逸し、方針を変えて再度内製化しようと思っても、うまくいかなくなるかもしれません。既存業務を外注する場合、これまでの担当者の勤労意欲やモラルの低下が懸念されますし、彼らをどう再配置していくか(あるいは解雇するか)という問題も発生します。 以上のように外注にはいくつかのメリット、デメリットがあります。これらを十分に考慮したうえで、自社の業務の流れの問題点を分析し、外注を進める業務と、社内に残していく業務を峻別することが求められています。業務を分類したうえで、効果的に外注を行っている1-18

元のページ  ../index.html#60

このブックを見る