056Chapter1Business Methods人を動かすには、自ら動いて範を示す 人を動かそうと思うのなら、経営者が自ら動いて範を示すことが肝要です。経営のパラダイムが大きく変化してきました。安くてよい物を提供できれば売れるという「供給指向」の市場から、顧客が求める物をタイムリーに提供していかないと売れない「需要指向」の市場に大きく転換しています。そして、 経済のサービス化、ソフト化などといわれますが、付加価値の源泉がノウハウや売り方などのソフト的な部分に移ってきています。そこで、顧客満足度を高めるには末端に至るまで一人ひとりの従業員の行動の質を高める必要があります。顧客から信頼される存在にならなければ継続的な取引、リピーターとしての信頼を勝ち取ることができません。そのため、最前線で顧客と直接対応する従業員には自分で考え、自分から率先して動き、採算性を考える企業家的な能力を発揮してもらわなくてはならない場面が増えています。そこでは幅広い職務領域をこなして、自律的に動いてくれる従業員であってほしいものです。このような人材は一朝一夕に育成できるものではありませんし、経営者や管理者に意識的に育てようとする意気込みがなければ育てることも難しいのです。経営者にも管理者にも、常に率先して範を示す行動が求められているということです。 人を動かそうとするなら、まず、範を示して、その意味を説明して納得してもらい、実際に体験をさせて、ほめてあげて(加点主義の評価)、自信を持たせなくては、人はなかなか納得して動きません。納得してくれなければ持続もしないものです。ノウハウの移転で従業員を育てる 中小製造業における研究開発では、経営者が技術者でない場合でも、自らがあたかも研究開発のプロジェクト・マネージャーのような役割を担って引っ張らざるを得ない場面が多いものです(右上図参照)。任せられる 工場長や技術者が育っていれば別ですが、多くの場合は経営者が率先垂範でプロジェクトを引っ張っていかざるを得ません。 これは営業活動においても同様です。マーケティング、販売促進においては社長の人的ネットワークを契機に進める例が圧倒的に多いのが実態です。社長が方針を示して従業員に指示するだけでは、成果を出すことは難しいのが現実です。現在のような厳しい経済状況のもとでは、企画提案型の営業ができるかどうかが、業績に大きな影響を与えます。それを担える人材を育てるには、社長自ら営業活動の手本を見せることで、ノウハウの移転が進むことになり、従業員も育つのです。経営者・幹部が研究開発、営業活動を率先垂範で行っている1-16
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