048Chapter1Business Methods「収益を生み出す現場」を知る 工場、工事現場、店舗など、企業には、いわゆる現場と呼ばれる場所があります。厳密な定義ではありませんが、総務や人事などのバックオフィスではなく、生産活動を行ったり、顧客と直接接触する部署を指していたりすることが多いようです。言い換えれば、企業の収益を生み出す中心となっている部門ともいえそうです。 小さな小売店や工場では、バックオフィスと現場が同じ場所か、すぐ近くにあって、そこでの状況は経営者にも比較的わかりやすいでしょうが、企業規模が大きくなればなるほど、経営者と現場との距離は離れていくことが多くなりがちです。 1-7(38ページ)でも説明したように、そうした現場の声が、本人から直接、 あるいは他の従業員を通して経営者に届くような仕組みをつくることは 重要です。しかし、それだけでは正確な情報を得ることはできないことがあります。整理整頓の状況など、実際に見なければわからないこともあります。また、従業員からはその人にとって不利な情報は伝わってきにくいですし、従業員が気づいていない重要な問題が隠れている可能性もあります。複数の従業員を介した情報は、なおさらそうした懸念が増大します。経営者自ら現場を訪ねる そうした課題を解決するためには、経営者自身が自ら現場に出向き、工場や店舗の状態を確認したり、従業員や顧客の様子を観察したりすることが必要です。そこで働いている従業員に経営者のほうから働きかけ、現場での課題、改善してほしい点などについて率直な意見を求めることは、正確な意思決定の重要な材料となり、自社の生産性を高め、顧客とのトラブルを未然に防ぐことにもつながります。 実際、東京商工会議所のアンケートによると、「社長や経営幹部が現場をよく歩きまわり従業員に声をかけて話し合うことが多い」という質問に「該当する」と回答した企業の割合は、偏差値60以上の優良企業では74%で、中小製造業全体の54%を上回っています。企業の規模や業種によって求められる頻度は異なるでしょうが、少なくとも時々思いついたように訪問するのではなく、ある程度日常的に現場を回る習慣を経営者自身が身に付けるべきではないでしょうか。経営者が日常的に現場に出向いて直に意見を聞いている1-12
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