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046Chapter1Business Methodsベンチマーキングでプロセス改善 優良企業の手法を取り入れることは、経営者であれば誰でも無意識に行っていることでしょう。一般に、同業者の中で繁盛していたり成長していたりする企業に目が行きがちですが、異業種のケースにも自社の参考になるものは少なくありません。ここでは、こうした他社事例を活用したプロセス改善手法のひとつである「ベンチマーキング」を紹介します。 ベンチマーキングとは、業界内や異業種の優れた業務手法と自社 の業務手法との違いを比較検討することで、業務の問題点と改善の方向を明確にし、経営の革新につなげていくものです。通常はPDCA(Plan→ Do →Check →Action)サイクルを応用して、「❶S(Strategy, 戦略策定)」、「❷P(Plan, 計画)」、「❸D(Do, 実行)」、「❹L(Learning, 学習)」、 「❺I(Innovation, 経営革新)」の5段階のステップで行われます(右図参照)。 それぞれのステップで実際に行う内容と、その際の留意点は以下の通りです。まず、「❶S(戦略策定)」では、改善すべき課題を抽出します。その際、SWOT分析などを使って、改善した場合に効果があると認められる特に弱い部分を発見することがプロジェクト全体の成否を左右します。次に、 「❷P(計画)」では、ベンチマーキングのスケジュールなど、プロジェクト全体の計画を立案します。「❸D(実行)」では、ベンチマークとする相手を特定してインターネットやマスコミでの公開情報や、企業視察などを通して、情報を収集します。この時重要なのは、ベンチマークとなる企業は必ずしも同業者である必要はないことです。ベンチマーク企業を模倣する限りはそれを超えるパフォーマンスをあげるのは難しいですし、ライバルは企業視察には応じにくいでしょうから、むしろ異業種の方が効果的とも考えられます。こうして集めた情報をもとに、「❹L(学習)」では自社とベンチマーク企業の違いを明らかにし、何がその違いを生み出しているのかを分析し、実際に現場でどのような対策を行うのかを検討したうえで、「❺I(経営革新)」として現場での導入を図ります。もちろん、一定の期間の後に成果を確認して、次の計画立案につなげていくことも重要です。ベンチマーキングの応用と展開 ここで紹介したベンチマーキングは、何もプロジェクトチームを組んで大掛かりに行うものだけとは限りません。常に同業他社や異業種の企業のよい点をみるように心がけ、自社に導入できるものは積極的に取り入れることを心がけるべきでしょう。そのためには、商工会・商工会議所や官公庁が発行している事例集、専門誌や新聞の記事などから、情報収集していくことも必要です。本ハンドブックの各項目ごとに掲載しているCase Studyも参考になるでしょう。 もっとも、ベンチマーキングも万能ではありません。なぜなら模倣だけではベンチマーク企業を超えるのは難しいからです。そのため、ベンチマーク企業をただ真似るのではなく、自社の実態にあわせてアレンジするとともに、彼らの持つ課題を発見し、さらによいシステムが構築できないかを検討することも必要となります。他社事例を自社に合うようにアレンジして取り入れている1-11

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