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042Chapter1Business Methods中小企業とランチェスター戦略 競合相手との競争に勝つには、ただ闇雲に行動していてはいけません。自社とライバルの競争上の位置関係を把握したうえで、より優位な状況をつくり出す必要があります。 英国の航空機エンジニアであったランチェスターは、第一次世界大戦の戦果を分析し、いわゆるランチェスターの法則を発見しました。簡単に整理すれば、戦力の弱い側は一騎打ちを、戦力の強い側は集団戦闘を選ぶと有利に戦うことができるというものです。これは、企業経営にも応用できます。マーケットでの地位が強い企業であれば、商品戦略は総合的に、地域戦略は広域的に、流通戦略は遠隔的に、顧客戦略は集団的に行うほうが有利です。一方、マーケットでの地位が弱い企業であれば、商品戦略は差別化に、地域戦略は局地的に、流通戦略は近接的に、顧客戦略は個別的に行うほうが有利です。 中小企業が必ずしも市場で弱い立場であるとは限りませんが、多くの場合は劣性です。従って、大企業と同じ戦略では対抗することは困難です。例えば小さな居酒屋が大手の居酒屋チェーンやファミリーレストランと競争していくには、特徴のあるメニューへの絞り込み、1つの鉄道路線での支店展開、地元農家との連携、地域限定の折り込み広告、といった経営資源を集中した戦略を立て、それを実行していくべきです。4つのポジションと競争戦略 ここで重要なのは、自社とライバルがどういう位置関係にあるかを明確に把握することです。米国の経営学者であるコトラーは市場での地位でリーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャーの4つのポジションと、それぞれ取るべき戦略を想定しています。市場でのトップ企業であるリーダーは、 2番手以下を意識して市場シェアを防衛していく必要があります。また、成長するためには市場規模自体の拡大も考えなければなりません。2番手グループのチャレンジャーは、リーダーの弱点を分析し、そこを突いた攻撃を行うとともに、より小規模のフォロワーが支配する市場を切り崩していく戦略が求められます。市場での立場の弱いフォロワーは、リーダー製品の模倣や改良などで市場での地位を確保していくか、ニッチャーへの転換が必要です。ニッチャーとは、商品、顧客、価格、品質、立地、流通チャネルなどが限定された小さな市場を発見し、あるいは自ら育てている企業のことで、小規模市場のリーダーといえます。まずは、自社がリーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャーのどれに当たるのかを考えてみてはいかがでしょうか。もっとも、多くの中小企業は、大きな市場では大企業に比べて弱い立場にならざるを得ません。従って、ニッチャーすなわち小規模市場でのリーダーとなるべく市場を細分化していくことも、中小企業の取るべき重要な戦略のひとつといえます。競合相手に勝つための戦略を立て、実行している1-9

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