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038Chapter1Business Methods新事業、新製品の失敗。3つの原因 新事業や新製品の開発は容易ではありません。せっかく新しい製品を開発しても、売り出してみるとパッとしないケースは、大企業でもしばしばみられます。このような新事業や新製品の失敗には、いくつかの要因が考えられます(右図参照)。 第1に製品自体の問題です。アイディアがよくても、技術が追いつかずに期待した性能が達成できなかったり、製造価格や開発コストを過小評価したために販売価格が高くなりすぎたりすれば、新製品はなかなか市場で認めてもらえません。 第2に、市場情報の不足です。まず、市場規模自体を過大評価してしまうと、どんなによい製品でも売上は予定通りいきませんから、投資が回収できなくなります。また、販売するターゲットの選定が適切でなければ、製品は売れません。そのほか、予期しない競合他社の参入や政府の規制によって、市場が分割されたり縮小されたりすることも考えられます。 第3に、経営陣の判断ミスです。技術や市場に関する情報が適切に経営陣に届いていても、先入観による思い込みや過度の自信から、不都合なデータを無視してしまうことは、意外に多いものです。全社的な情報収集と共有を こうした失敗を避けるためにも、経営者は自ら情報収集を心がけるだけではなく、従業員の収集した情報を汲み上げる必要があります。直接顧客と接する営業担当者は、経営者の知らない重要な市場のトレンドを感じているかもしれません。開発担当者や製造担当者は、技術上の問題点に早い時期から気がついているはずです。彼らが、技術や市場に関する情報を積極的に観察して、タイムリーな情報提供や経営者へ意見を述べることができるような仕組みをつくることが経営者には求められます。こうした従業員の意見の活用は、新製品の企画段階でのアイディア収集や、新たな顧客の開拓にも、もちろん有効な手段です。 もっとも、仕組みができていても経営者がそれをうまく活用しなければ意味がありません。最初は情報や意見が集まっても、それがまったく活用されないということがわかれば、従業員も次第に何もいわなくなってしまいます。従業員の意見を無視したうえで、自らの判断ミスによる開発の失敗の責任を、開発担当者や営業担当者の責任にしてしまったりすれば最悪です。最終的には従業員の声を聞く姿勢を経営陣が持てるかどうかというのが、情報を活用するうえでの重要な鍵であるといえるでしょう。社員のアイディアや集めた情報を汲み上げ、新事業・新商品の開発や顧客開拓に役立てている1-7

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