037Case Study037戦略・経営者マーケティング組織・人材運営管理財務管理危機管理・社会環境・知財管理10の財務指標関連機関概要Step Up1 有望な新事業開発に対して、必要な予算と人材を投入している 新事業開発にはスピードも重要です。せっかく新しい商品やサービスを開発しても、市場への導入が他社に遅れれば、その効果は半減します。中小企業では資金や人材は限られていますから、最も有望なものを選び、そこに集中的に資源を投入することが求められます。こうして、どのような新事業を開発するのかを明確にすることは、経営者と従業員の間での、企業のめざす方向性の共有につながるとともに、開発責任者や技術者を動機づけることで、人材育成の機会にもなるのです。2 新事業開発に関して、営業、開発、 生産などの部門間の協力体制が整っている 新事業の開発は、経営陣や開発チームだけではうまくいきません。試作をうまく量産に乗せていくには生産部門と協力した設計の調整が不可欠です。実際に顧客に新製品を販売していく営業部門も、新製品のコンセプトを十分理解しておく必要があります。新事業の開発は、全社一丸となって、初めて成功するのです。「人がやらないことをやる」のがイノベーション Case1 N社の主力製品のひとつに脳外科手術用の顕微鏡がある。 アメリカでは70%ものシェアを持つ強力な製品だ。人気の秘密は、徹底した現場観察に基づき、細部まで設計が行き届いていることだ。医師に使ってもらい「(機器の)ここが手に当たる」などの反応を取り入れ、どんどん改良を重ねていく。実際の手術にも立ち会い、現場の情報を丁寧に集める。台座部分が偏った形をしているのは、手術室での安定性を確保するため、重心を真ん中に持ってきているからだ。こうした設計意図を医師に説明すると「他にも工夫があれば教えてくれ」と興味を持つ。医師が職人と同様に道具を厳選するのは、短時間で効率的に手術をしたいからだ。感心した医師は学会などで他の医師にも製品の宣伝をしてくれる。(脳外科用手術顕微鏡等製造・42人) Case2 O社では、今は半導体向けの研削剤の売上が多いが、それにずっと頼るつもりはない。次の主力分野になる物はないかと常に探しており、いくつか種をまいている。同社の事業パターンを振り返ると、最初は商社としてもうけを出して、次に開発品を作って利益を生み出して、その利益をもとに次の分野を探すというやり方だ。開発テーマは、「人がやりたくないことをやる」だ。人が「そんなのはムリだ」というものにチャレンジする。(化学工業薬品製造・84人)分類内容製品ターゲット❶純粋な新製品まったく新しい市場の創造まったくの新製品新規市場❷自社にとっての新製品他社市場への参入まったくの新製品新規市場❸コストダウン同等の製品を低価格で提供改良(同機能)既存市場新規市場❹製品バリエーション追加自社の製品に新たな種類を加える改良(異なるバージョン)既存市場新規市場❺高性能の代替品既存製品の性能改善や代替品導入改良(性能向上)既存市場新規市場❻リポジショニングこれまでターゲットとしなかった顧客に販売既存製品新規市場██新製品の種類資料:ブーズ・アレン&ハミルトンの分類を参考に作成
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