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032Chapter1Business Methods「誰に」、「何を」、「どのように」提供していくのか 企業がカバーする事業の領域を「事業ドメイン」と呼びます。最もわかりやすいのは、例えば電鉄会社なら「電車による輸送サービス」といったような、どのような商品やサービスを提供するのかという商品軸による定義です。ただ、これは現在の事業を説明するにはわかりやすいものの、他社との差別化のあり方や、今後の事業展開の方向性は明確ではありません。 そこで最近では、商品やサービスを誰に提供するのかという「❶顧客軸」、どのような技術やノウハウをもとに商品やサービスを提供するのかという 「❷技術軸」、どのような機能や顧客にとっての価値を提供するのかという 「❸機能軸」の3つの切り口によって事業ドメインを規定することが多くなりました(右表参照)。単独の軸だけではなく、複数の軸で定義するケースもあります。事業ドメインをきちんと定義することで、企業は資源を集中すべき分野を明確にできます。逆に対象としない事業領域も明確になることから、無謀な多角化への牽制にもなります。さらには、対外的に企業イメージを印象づけるツールと考えることもできます。言い換えれば、より強い自社ブランドを構築していくことにもつながるといえるでしょう。事業ドメインは狭すぎず広すぎず。全社で共有 事業ドメインは企業の存在意義と発展の方向性を決定づけるものですから、将来に向けて成長性のあるものを選んでいく必要があります。あまり広すぎると方向性が曖昧になりますが、狭すぎると企業が伸びる余地が少なくなります。例えば、多くの電鉄会社は、「電車による輸送サービス」という狭い事業ドメインではなく、「沿線住民へのトータルサービス」という「❶顧客軸」のやや広い事業ドメインを選択することで、沿線を中心とした百貨店、遊園地、不動産開発への参入を進めて成長していったといえます。 事業ドメインは従業員にも浸透させることが大切です。自社がなぜそのような事業ドメインを選択するのかということを十分に説明し、経営者と従業員が同じ方向性をもって行動することで、企業の経営資源を最大限に生かすことができるのです。自社の事業領域(対象顧客・商品・提供方法・技術などの組み合わせ)は明確になっている1-4

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