027Case Study027戦略・経営者マーケティング組織・人材運営管理財務管理危機管理・社会環境・知財管理10の財務指標関連機関概要周知徹底と、めざすべき方向へ向けた取り組み 経営理念・社是を明文化しても、それが守られなければ意味がありません。経営者だけではなく、社内にも十分に浸透させることが必要です。 社会経済生産性本部の調査(下記Step Up 1参照)でも、「社内での掲示」「社内誌・リーフレットの配布」「カードや手帳に印刷して常時携帯」など、さまざまな方法で周知徹底が試みられています。そうすることで、経営者を含めた従業員全員が経営理念・社是を理解していれば、企業のめざすべき方向に向かって全社一丸となって進むことは、より容易になるに違いありません。Step Up1 経営理念・社是を必要に応じて見直している 一度決めた社是や社訓は、常に守っていくよう心がけるべきでしょう。しかし、経営環境の変化を無視して社是や社訓に固執するあまり、事業の方向性を見失うことになっては、本末転倒です。実際、社会経済生産性本部(現 日本経済生産性本部)が大企業に対して2004年に行った調査によると、1998年から2004年の6年間に社是や社訓の見直しや変更を行った企業は全体の26.4%みられました。もし、社是や社訓が現状に合っていないのであれば、変えていく柔軟さも必要でしょう。2 経営理念・社是を外部の関係者に伝えている 経営理念・社是を外部に向けてアピールすることも重要です。その企業が何をめざしているのかといった理念を明確にすることは、企業のブランドイメージの確立にもつながります。大企業のようにテレビコマーシャルや新聞雑誌の広告を多用することは中小企業には難しいかもしれませんが、店舗や工場での掲示、ホームページの活用、会合などでの経営者による直接の発信など、方法はいろいろとあるはずです。なお、こうした外部への発信のためには、あまり長い文章は向きません。長い経営理念は、少し短めのキャッチフレーズにまとめて、簡潔にアピールすることも必要でしょう。経営理念はわかりやすく、粘り強く語り続けろ Case1 A社は、企業が示した方向性をいかに実行へ移すかの落としこみが重要だと考えている。そこで経営方針を徹底させる手段のひとつとして、経営理念カードを従業員全員に携帯させ、会議の際など、そこに明示された文言に関連したケースをあげて議論する。 (文房具製造/販売・136人) Case2 B社の社長は従業員によく理念を語りかける。例えば、全体会議(3、9、12月の開催)の場や工場での立ち話の場を通じて語りかけている。企業は人でできており企業の全部が人次第なので、従業員皆に同じ方向を向いてもらうことが大切と考えている。(振動計測装置等製造・23人) Case3 社長就任時に3カ月間かけて一生懸命考えて経営理念と社訓を定めたのはC社だ。それまで同社には、経営理念の類は何もなかった。同社の社訓は、企業風土を表している。こうした理念や社訓の話をいつも従業員に語っている。何をやるにも目的意識が必要なので、いろいろな言葉で表現して伝えている。(電子機器用部品製造・50人)言葉定義経営理念企業行動における基本的な価値観、精神、信念、あるいは行動基準を表明したもの社是企業の経営上の方針・主張経営ビジョン企業のあるべき姿に対する構想ないし願望社訓その会社で働く社員の指針として定められた理念や心構え██広辞苑にみる経営理念・社是などの定義資料:新村出編「広辞苑第六版」岩波書店(2008年)を参考に作成
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