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026Chapter1Business Methods中小企業にも必要な経営理念・社是 企業が何をめざしているのかを明確に示すことは、経営者の重要な使命です。広辞苑によると、経営理念とは、企業行動における基本的な価値観、精神、信念、あるいは行動基準を表明したもの、社是とは、企業の経営上の方針・主張を意味します(右表参照)。言葉によってニュアンスはやや違いますが、呼び方はどうであれ、大企業のほとんどが、企業のあるべき姿、経営者の方針や理念、従業員に求められる基本的な行動規範(行動する際の模範や手本)や心構えなどについて、何らかのかたちで文章化しています。 もちろん、経営理念や社是を示すことは、中小企業にとっても必要なことです。帝国データバンクが明治末年以前に創業した老舗企業を対象に2008年に実施した調査では、「家訓、社訓、社是、経営理念、信条」を持っている企業は77.6%で、その役割としては「共通価値観の醸成」「基本的な経営指針」「精神面での支柱」などがあげられています。また、日本政策金融公庫が2015年に実施した調査「中小企業による経営危機への対応と持続的な競争優位獲得への取り組み」によれば、利益率が高い企業は、低い企業に比べて「経営理念が従業員に浸透している」と回答している割合が高いという結果が示されています。経営理念・社是には簡潔さと具体性を 経営理念や社是の形式は、企業によってさまざまです。漢字数文字のところもあれば、何ページにも及ぶものもあります。一般には簡潔なほうがよいと思われますが、短すぎて意味が不明確になってもいけません。まず重要な項目を列記して、次にやや詳しく具体的に記述するのもひとつの方法でしょう。 例えば、総合家電メーカーグループでは、大きな経営理念として「人間尊重を基本として、豊かな価値を創造し、世界の人々の生活・文化に貢献する企業集団をめざします。」としたうえで、「❶人を大切にします。健全な事業活動を通じて、顧客、株主、従業員をはじめすべての人々を大切にします。」 「❷豊かな価値を創造します。エレクトロニクスとエネルギーの分野を 中心に技術革新を進め、豊かな価値を創造します。」「❸社会に貢献します。よりよい地球環境の実現に努め、よき企業市民として社会の発展に貢献します。」と、詳しく説明しています。経営理念・社是(もしくはミッション・ビジョン)は社内に浸透している1-1

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