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215Chapter7Checks戦略・経営者マーケティング組織・人材運営管理財務管理危機管理・社会環境・知財管理10の財務指標関連機関概要4 「黒字倒産」という言葉があります。損益計算書上では黒字にもかかわらず、倒産してしまうのです。では、なぜ黒字なのに倒産してしまうのでしょうか。 企業の倒産は、ほとんどの場合「キャッシュ(現金)」が足りなくなり、資金繰りがつかなくなってしまったことが原因です。つまり、現金が底をついて借入金や支払手形が決済できなくなり、たとえ黒字であっても倒産に追い込まれてしまうのです。さらにこの原因をさかのぼってみると、次の4つのケースにあてはまります。❶債    権:売掛金や貸付金などが滞り、回収が進まず、現金が不足する。❷在    庫:不良在庫が積み上がり、現金化が進まず、現金が不足する。❸過大投資:過去の過大な設備投資などにより、借入金が返済できなくなる。❹資金調達不調:あてにしていた借入などが不調に終わり、現金が不足する。 決算書上の利益と実際の現金の帳尻とは必ずしも一致しません。「黒字倒産」とは、まさに「勘定合って銭足らず」の状態です。決算書上の利益を管理することも大切ですが、実際の現金の帳尻を管理することも、とても大切なことなのです。 キャッシュフローとは、簡単にいえば「現金の出入り」、つまり「現金ベースの収支」です。ここでは、営業で稼ぐ年間のキャッシュフローを税引後利益と減価償却費の和で求め、それを売上高で割った物を「売上高キャッシュフロー比率」として算出します。これは、損益計算書上の利益ではなく、営業キャッシュフローを用いて収益性を判定する指標です。売上高キャッシュフロー比率(%)=(経常利益0.6+減価償却費)÷売上高100 なお、経常利益に0.6をかけるのは、わが国の法人税の実効税率を0.4(40%)と置いて、税金分を控除するためです。また、減価償却費を加えるのは、減価償却費が実際の現金の支出を伴わない経費であるため、結果的に減価償却費分だけ企業の手元に現金が増加するからです。 ここで算出したキャッシュフローが、各年の借入金返済の原資となるのです。キャッシュフローが年間借入金返済額よりも少ない場合は、新たに資金を調達しなければ、手許の現金が減少していき、やがて現金が底をつくことになるので注意が必要です。収益性指標売上高キャッシュフロー比率しっかりキャッシュを生み出せているかのチェック3つのキャッシュフローを分析する キャッシュフローをさらに分析するために、企業のどんな活動によってキャッシュが出入りしたのかを示す「キャッシュフロー表」の作成をおすすめします。 企業の活動別にみると、キャッシュフローは、大きく「営業」「投資」「財務」の3つに分けることができます。Step Up 営業キャッシュフロー企業の通常の営業活動からのキャッシュフローの収支のことであり、売上高、売上原価、販売費や一般管理費の支払いなどに伴う現金の収支、売掛金や買掛金の増減などによる現金の増減をまとめたものです。営業キャッシュフローは本業で生じるキャッシュを示しており、これがマイナスになると事業活動そのものに改善の必要があるということを示しています。「営業キャッシュフロー」を改善させるためには、売上増加、経費削減などに加え、在庫圧縮、売掛金回収が重要になります。投資キャッシュフロー投資活動における現金の支出や回収のことであり、土地建物、設備などの取得・売却などが要素となります。「投資キャッシュフロー」は、企業の将来に向けた投資の結果ですので、マイナスになったから悪いということはありません。むしろ、これがプラスであれば、将来の成長に向けた投資を十分に実施していない可能性もあります。目安として、「営業キャッシュフロー」のプラス額の範囲内で「投資キャッシュフロー」がマイナスであれば、健全な投資を実施しているといえるでしょう。財務キャッシュフロー「営業キャッシュフロー」や「投資キャッシュフロー」の収支をあわせるための借入金の調達・返済などを示すものです。企業活動別3つのキャッシュフロー

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