196Chapter6Business Methods6-4事業活動に関連する重要な法令を把握し、遵守する仕組みが構築されているコンプライアンス(法令遵守)を徹底する3つのメリット 企業が法令遵守を徹底することで生まれるメリットは、第1に顧客からの信頼が高まることです。その結果固定客が増え、売上増につながります。第2は長い目で見るとコストダウンになることです。法律を犯すことで受ける社会的な制裁は大きく、信頼を回復するコストははかりしれません。法律違反を予防するコストは結局割安になります。第3は人材確保につながることです。倫理観のない企業にはそれなりの従業員しか来ません。誠実な企業には誠実な人材が集まります。コンプライアンスを徹底する方法 では、中小企業が法令遵守を徹底するにはどうすればよいでしょうか。 第1は、自社にとっての重要度の高い法令などを明らかにすることです。企業を対象とする法令は多岐にわたります。そのすべてに対してマニュアルを作成するなどの対応策を講じるのは現実的ではありません。自社の事業活動にとって重要度の高いものから対応策を講じなければなりません。そして重要度は、法令違反の発生確率と発生した場合の影響度によって判断します(右図参照)。 最も重要度が高いのは、「❶発生確率が高く、影響度が大きいもの」です。例えば個人情報の漏えいは多くの企業で発生するおそれがあり、その影響は大きいので、ここに分類されます。次いで「❷発生確率は低いが影響度が大きいもの」、「❸発生確率が高く、影響度が小さいもの」と続き、優先順位が最も低いのは「❹発生確率が低く、影響度も小さいもの」です。 第2は、社内外に法令遵守を徹底することを表明することです。法令遵守が企業の維持発展にとって不可欠であることを企業の経営方針などに掲げ、従業員の意識に訴えます。また社外に公表することで監視の目を意識するようになるなど、健全な緊張感が生まれます。 第3は、マニュアルを作成します。重要度の高い法令(前述の❶~❸)をカバーするマニュアルをめざします。なお、東京商工会議所では「経営者のための企業行動規範対応チェックシート」を公開しているので、参考にしてもよいでしょう。 第4は実践体制づくりです。マニュアルをもとに勉強会を開催したり、通信教育制度(東京商工会議所「通信講座・ビジネス実務法務検定試験」など)を設けたりします。 以上、法令を遵守するための取り組みをみてきました。しかし法令を守るのは企業に求められる最低ラインです。法令遵守だけでなく、誠実さや倫理観に則った経営をめざすように心がけましょう。
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