192Chapter6Business Methods6-2自社にとって悪い情報がすぐに経営者に伝わる組織になっている内部通報に対処し、問題の深刻化を回避 近年、内部告発をきっかけに国民生活の安心や安全を損なうような企業不祥事が発覚するケースが増えています。このため、そのような法令違反行為を労働者が通報した場合、解雇などの不利益な取扱いから保護し、企業の法令遵守経営を強化するために、公益通報者保護法が2006年4月に施行されました。 同法は、規模の大小を問わずすべての事業者に適用されます。保護されることになる法令違反行為は、刑法、食品衛生法、金融商品取引法、JAS法、大気汚染防止法、廃棄物処理法、個人情報保護法など、政令で定められた433本の法律に違反する行為です(2011年1月現在)。 中小企業も同法の適用対象ですが、内部通報制度は普及しているとはいえない状況にあります(右図参照)。しかし、自社にとって不都合な情報が経営者に伝わらないと、早期に適切な対処ができません。そして問題が深刻化してから発覚すれば、企業の存続も危うくなるおそれがあります。内部通報制度の導入からフォローアップまで では内部通報制度を導入して機能させるにはどうすればよいのでしょうか。通報を受け付けて是正措置、フォローアップを行うまでのステップごとに、制度の導入における留意点をみていきましょう。 第1ステップは、通報の受付です。まず通報窓口を設置しなければなりません。顧客からの苦情窓口が兼務するのもひとつの手です。可能であれば、法律事務所など外部に設置することが望ましいでしょう。複数の中小企業が共同して委託することも考えられます。また、通報者に対して不利益な扱いをしないことを社内の規定などに明記する必要があります。なお、中小企業の場合は通報者の特定が難しくないことから、匿名での通報が多くなります。匿名でも対応できるような通報手段をとるべきでしょう。 第2ステップは、調査の実施です。通報者が特定されないよう調査の方法に配慮しなければなりません。 第3ステップは、是正措置の実施です。調査の結果、法令違反が明らかになった場合は、即座に是正措置と再発防止策を講じなければなりません。また必要ならば、関係行政機関や取引先、顧客などに報告を行ったり、関係者の処分を行ったりします。 第4ステップは、フォローアップです。第3ステップ終了後、法令違反などが再発していないか、是正措置や再発防止策が機能しているかを確認します。また、通報者が通報したことによって不利益な扱いを受けていないかを確認するべきです。
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