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190Chapter6Business Methods6-1経営者の有事の際の対応について定めている経営者にも「もしも」があることを意識する 経営者が入院や事故などによって経営に携われないことは企業にとって大きなリスクです。そうした事態が起こる確率はあまり大きくはないものの、いったん起こると企業に大きなダメージを与えるだけに、経営者の有事の際の対応を定めておくことは重要です。 ここでは有事を、「❶経営者が入院などの理由で一時的に経営に携われないケース」、「❷経営者が長期入院・逝去などの理由で経営に携われなくなったケース」に分けて考えます。 まず❶のケースではどのような対応を考えるべきでしょうか。経営者が一時的に経営に携われなくなることで生じる問題、すなわち企業をどう経営するのかという問題と、経営者個人の生計をどう維持するのかという問題に分けて、対応策を検討します。企業経営に関する対応策 企業経営に関する対応策は、第1に、一時的に経営を誰が担うかを事前に定めておくことです。すでに後継者が決定している場合、代役は当然、後継者となります。後継者が経営能力を高められるよい機会だと、前向きに考えてみてはいかがでしょうか。まだ後継者を決めていない場合は、家族社員や信頼できる従業員、後継者にしたいと考えている人を代役に定めます。ただし、いずれの場合も重要な決定事項などは報告させたうえで、経営者自身が判断するようにしておきます。 第2は、誰を代役に決定したかを、家族・親族や従業員、取引先、金融機関、税理士など、社内外に周知することです。一時的とはいえ経営の権限を委ねるのですから、事前に経営者の口から関係者に告知しておくべきです。 第3は、代役がスムーズに引き継げるように、経理情報は常に最新の物を作成することです。資金繰り表などが古ければ、突然の引継ぎで代役が的確な判断を下せなくなるおそれがあるからです。経営者個人の生計の維持 経営者個人の生計に関する対応策は、保険などに加入することです。ひとつは労災保険の特別加入制度です。労災保険は本来、労働者の負傷、疾病、死亡などに対して保険を給付する制度なので、代表者や役員、個人事業主は対象外です。しかし、一定の条件を満たす中小事業主や自営業者(右表参照)は、特別に任意加入が認められています。 もうひとつは、役員を対象とする保険などです。例えば、商工会議所などでは会員事業所を対象に、役員・従業員が病気やケガのために、入院・自宅療養で働けなくなった時に所得補償保険金を給付する「所得補償共済制度」を設けている場合があります。損害保険会社でも同様の保険商品があるので、加入を検討してはいかがでしょうか。 ❷のケースについては、右ページStep Upをご覧ください。

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