172Chapter5Business Methods5-5売上高や利益など、経営の具体的な数値目標や計画を設定している損益計画を通して数値目標を具体化 企業で立案された事業計画には、売上高目標や利益目標が具体的な数値目標として設定されていなければなりません。具体的な数値目標がなければ経営は成り行き任せとなってしまい、数値目標を達成するために努力をしたり工夫をしたりという行動につながっていかないからです。売上高目標や利益目標を掲げることで、従業員共通の目標が定まるとともに改善点も明確になり、成り行き経営から脱却して計画的経営が実現されていきます。 企業の経営方針として目標とすべき利益が明示されると、これは中長期(3年から5年)にわたって達成すべき平均的目標となります。この目標利益と企業内外の環境変化を勘案して計画期間における目標利益をいくらにするか、またこれをどうやって実現するかを明らかにしたものが損益計画です。従って、損益計画は、目標利益をいくらにするかということと、その目標利益をどのように実現するかを計画することの2つから成り立っています。前者が目標利益の決定であり、後者が売上などの収益や仕入れなどの費用の見積になります(右表参照)。 まず、目標利益については、事後的に算出された実績利益ではなく、過去の利益水準を参考にしながらも獲得すべき目標利益として設定されなければなりません。この場合に費用は、収益から目標利益を控除して費用を算出する方法がとられます。つまり、企業内外の事業環境の分析をもとに次年度の収益を見積って、これから所定の目標利益を控除して許容費用を算出していくのです。 これらの収益目標や許容費用の数値の背景には、明確な算定の根拠が必要です。収益目標であれば、顧客層や受注先など販売対象の明確化、取扱商品・製品の選定、店舗販売や通信販売など販売方法の選定、営業体制の明確化などが必要になります。一方、許容費用については、販売計画に沿った商品・製品内容の明確化、商品や材料の安定供給が可能な仕入先や外注先の確保、仕入先との支払条件の確認などが必要となります。また、固定費のなかでも大きな割合を占める人件費については、その発生の基礎となる業務内容別の要員計画が必要となります。目標収益以上の実績、許容費用以下の実績を上げるように管理 こうして損益計画が設定されると、収益については目標収益以上の実績を、費用については許容費用以下の実績を上げるように経営活動を管理していきます。実績利益が目標利益に達しない場合でも、実績利益が目標利益に比べていくら少なかったのか、それは収益が目標に達しなかったためか、費用が許容値を超過したためかの原因が明らかになります。この原因を改善するための適切な対策を講じることが、損益計画を立案することによってはじめて可能となるのです。
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