164Chapter5Business Methods5-1月次試算表に基づいて、最新の財務状況を把握している試算表は企業の健康状態を示す健康診断書 試算表は、仕訳帳から総勘定元帳の各勘定への転記が正確に行われているかどうかを検証するための集計表です。同時に、試算表は各企業で設定したすべての勘定科目を一覧できるため、経営管理上も有効に活用できます。そのため、金融機関からの融資を受ける際にも、決算書のほかに直近の試算表の提出を求められることが多いのです。試算表は決算時には必ず作成されますが、毎月末や週末など必要に応じて作成されます。特に、月次試算表は企業の月々の健康状態を示す健康診断書のようなものとして活用したいものです。月次試算表から財務上の動向をチェック 試算表には合計試算表、残高試算表、合計残高試算表の3種類があります。合計試算表は各勘定科目全体の増減の動きを示し、残高試算表は各勘定の特定時点の残高を示します。合計残高試算表は両者をひとまとめにした表(右表参照)です。残高試算表は貸借対照表と損益計算書を合わせたような表になっていることから、企業における最新の経営状態、すなわち財政状態や経営成績を知りたい時に最も役立つ資料といえます。月次試算表から自社の経営について次のような点をチェックします。❶売上高の動向はどうか? 当月の売上高について、前月と比べた増減、前年同月と比べた増減、前年同月累計額と比べた増減、予算の達成度合いなどをチェックしていきます。そしてさらに、商品別・部門別・店舗別などに売上高が区分されているならば、それぞれの動向をチェックし問題点を発見します。❷利益の動向はどうか? 当月は利益が出ているのか損失が出ているのか、前月と比べた増減、前年同月と比べた増減、前年同月累計額と比べた増減、予算の達成度合いなどをチェックしていきます。そして、損失が出ている場合には、どこの得意先あるいはどの商品の売上が不足しているのか、どのような費用が増えているのかなどについて原因分析を行います。利益が出ている場合にも、どのような販売促進活動により売上高が増えたのか、どの費用が削減できたのかの要因分析を行うことが重要です。❸現金・預金残高などの動向はどうか? まず、現金・預金の残高と増減をチェックします。現金・預金の減少が続いているようであれば、どのような原因で資金が流出しているのかを確認すると同時に、取引銀行の担当者に相談するなど早急な対策を講じなければなりません。同時に、売上債権(売掛金や受取手形)の増減、買入債務(買掛金や支払手形)の増減、売上債権と買入債務のバランスなどのチェックをして資金の動きを確認します。また、在庫(棚卸資産)の増減についても、販売できない不良在庫が増えていないかどうか注意が必要です。
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