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130Chapter3Business Methods人の欲求には5つの段階がある 人間はどうしたらやる気を起こすのでしょうか? A.H.マズロー(Maslow)の欲求5段階説では、「❶生理的欲求」→「❷安全・安定の欲求」→「❸社会的欲求(集団への帰属)」→「❹自尊(認められたい)の欲求」→「❺自己実現の欲求」、と段階があり、下位の欲求が満たされるとより上位の欲求を求めると説明されました。最上位の欲求が自己実現で、自らなり得るところのものになろうとする欲求です。 高い達成意欲に恵まれた人々の特徴は、適当に難しく、だが達成可能な目標を自ら設定します。そして、成功の報酬よりも自己の内面・個人的達成感を重視します。もちろん報酬を拒絶するわけではないですが、達成それ自体に比べて報酬はそれほど重要なものとは考えていないのです。受け取った金銭や賞賛よりも、難しい問題を克服して解決して得た達成感を重視するのです。そして、前段階の欲求が完全に満足されない限り、次の段階の欲求が最優先欲求ということにはなりません。豊かな今日の社会では、社会的欲求、自尊の欲求、自己実現の欲求などの欲求に比べて、生理的欲求や安全・安定の欲求は大きく満たされているのです。怠け者か?創造的な職務遂行者か? D. マグレガー(McGregor)は、労働者は本来怠け者で、金銭で刺激し、監督を厳重にして細々と命令しないと怠ける者(X理論)と、労働者も一定の条件のもとでは、自ら進んで創意を発揮し働く者(Y理論)との2つのタイプに分けて論じています。 つまり、X理論では、大多数の人間は命令されることを好み、責任を負うことを好まず、なによりも安全・安定を望むものだと仮定します。従って、人は金銭と金銭以外のかたちの手当、および罰へのおそれによって行動を動機づけられると考えます。X理論を是とする管理者は、統制を厳しく行い、細かく指示・監督する必要があると考えます。 一方、Y理論では、人間は適当な動機づけさえあれば、基本的に自律的に職務を遂行するものであり、かつ創造的であると考えます。そこで、管理者は個々人の内にある潜在的可能性を触発することをめざさなくてはなりません。正しく動機づけられることによって、誰でも努力を組織目標の達成に向けながら、しかも自己の目標を最上のやり方で達成することができるようになるのです。本人の期待と上司の期待の合致がモチベーションを向上させる 人間は誰でも心の中にいろいろな要求(動因=motive、drive)を持っています。そのなかのなんらかの要求が、仕事の達成から得られることが期待される成果と結び付けば、やる気が起きるものです。どんな要求が仕事の達成とどんな誘因で結び付くのかを説明したのが、要求(動因)の理論と誘因の理論です。人間の内的要求にはいろいろなものがあるのですが、そのうちのどれが最も強いかは、生活水準や個性によっても異なります。従って、社員の経営参加(経営参画)の仕組みを構築している3-16

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