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125Case Study125戦略・経営者マーケティング組織・人材運営管理財務管理危機管理・社会環境・知財管理10の財務指標関連機関概要Step Up1 総額人件費が経営を圧迫しない範囲内で各人を 実力主義で優遇している リストラというと、総額人件費の抑制だけが注目されがちですが、本来は事業構造の再構築のことをいいます。事業内容の見直しによって資源を再配分し、選択と集中を進めることで、競争力を高めようとの考え方です。 実力主義というと短期的な成果を強く反映させることを考えがちです。緊急対応時にはそれでも通りますが、あまりにも個人の成果要素を強めすぎると、職場内がギスギスして、チームワークへの弊害が大きくなります。つまり、中長期にわたって企業の競争力を高める実力主義でなくては長続きしませんし、納得性や公平性を維持することが難しくなって、意味がありません。このような所与の条件のなかで、各人の実力を明確に評価して、優秀な人材には処遇で報いる仕組みにする必要があります。2 業績と成果配分の仕組みを従業員に公開している アメリカと日本の成長型中小企業を調査した結果によると、業績と成果配分方式について従業員に公開している企業では、従業員数の伸び率や利益率の伸び率は統計的に意味のある有意差がみられました。大手ファスナーメーカーでは以前から売上や利益の伸びに合わせて、設備導入の基準や従業員への成果配分の式があり、全世界の子会社の社長を日本の工場に集めた大会議でそれを報告しています。生産性を向上させて売上も伸びれば、成果としてこの程度還元されるとの数式ができているとのことでした。 賃金だけがインセンティブとなるわけではありませんが、少なくとも、頑張れば賞与がこうなるのだといったことが見えていることが励みになります。努力には公平に報いる Case 能力主義を徹底するU社では、業績評価のランクに中間があると皆が中間に寄ってしまうので、中間の評価をなくした。処遇に関して年功序列、性別、国籍などは一切関係なく、実力のある者がそれに応じた給料をもらうという考え方だ。評価基準は組織レベルも個人レベルも中間がないので、よいほうか悪いほうのどちらかに必ず分かれることになる。具体的には、評価のランクは部課レベルでAからDまでの4段階、個人レベルでAからFまでの6段階に分かれている。 この業績評価は年2回行われ、その結果は給与体系に反映される。また、ボーナスの査定でも評価ランクに応じた支給率がかけられる。こうしたきめ細かい評価制度により、従業員に緊張感を持ってもらうのと同時に頑張りにも報いている。(スクリーン印刷機製造・74人)██チーム内での個人の処遇出所:舞田竜宣「納得できるチーム評価のあり方と処遇への反映」 労務行政研究所(2006年)個人評価●個人技能●個人業績●個別処遇チーム内の個人●数値結果●目標達成度●貢献度チーム評価●個別に分けられない●皆で祝い、皆で反省する●平等な配分処遇のカギは非金銭的報酬

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