114Chapter3Business Methods技術マップを作成し、欲しい人材の質や量を確かめる 採用が難しいからといって、漠然と成り行きに任せて採用していては、よい人材を確保することは難しいです。人員計画と経営戦略が連動していなくては、企業変革を実行するとしてもその担い手が社長しかいないという深刻な状況になってしまいます。どのような人が欲しいのか、人材ニーズのコンセプトを明確にし、そのコンセプトに沿って基準を具体的に設定しておく必要があります。そのために、まずは現在の企業内での人材の厚みがどのようであり、どのような分野の人材の層に弱みがあるのかを十分認識する必要があります。どのような専門分野の技術者がどのような部門で働いているのか、といった社内人材の技術マップを作成することで、専門人材の偏りを確認することができます。そこから、欲しい人材像の基準を具体的に考えていくことが重要です。 人材配置において大事なのは、まずは経営戦略をマクロレベルからミクロレベルまで展開したうえで、ミクロレベルの経営戦略との対応づけを考えながら人材の質と量を決めることです。その際に、その末端組織に必要とされる人材と、それをとりまとめてリーダーとして活躍することが期待されている人材とに分けて考える必要があります。 とはいえ、欲しい人材の詳細仕様が明確になったとしても、そのような理想的な人材を確保することは難しいのが現実です。中途採用であれば、今までの経歴・経験をベースとして実績からある程度評価することができますが、新規学卒者の場合には採用してからのトレーナビリティ(訓練可能性)を重視した採用とならざるを得ません。むしろ、将来的には伸びるであろうとの期待を込めて採用し、採用してから意識的に育てることにならざるを得ません。日常的に幅広く採用候補者を探す 大事なのは、このような人材を求めているということを明確にし、かつ採用の基準を設定したうえで、日常的に採用候補者を探し続けることです。そして、基準をクリアするよい人に出会ったら、そこで多少無理をしてでも採用しておくことです。中小企業の場合はいくらよい企業であっても、新卒の学生を採用するには大企業に比べると知名度の点でハンディがあるものです。中途採用であっても、欲しい人材に出会える機会は多くありません。そこで、仕事のうえでのつきあいとか、知り合いの知り合いといった緩い関係でつながっている人のなかで、たまたま、これぞと思う人材に出会ったらといった場合に、本来の採用時期でなくても確保するといった柔軟な採用戦略を持つべきでしょう。 採用時期を意識的にずらすこともひとつの戦略です。多摩地区にあるFAソフト開発関係の企業では理系人材を採用するために、国立大学の大学院の入試が終わった時期にポイントを合わせて各大学に求人票を出して採用しています。つまり、大学院に落ちて経済的な理由などから大学院進学をあきらめた人材に狙いを定めているわけです。多くの企業は新卒採用を既に締切っている時期ですので、学部卒ですが国立理科系大学に進んだ優秀な学生が確保できているとのことでした。採用したい人物像の基準が明確になっている3-8
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