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112Chapter3Business Methodsトラブル回避のためにも事業承継は計画的に 経営者の世代交代、すなわち事業承継は、数十年に一度の重要なイベントです。特に、先代から事業を受け継いだ経験のない創業者にとっては、事業承継はまったく未知の領域といえるでしょう。 事業承継は、頻繁に経験するイベントではないだけに、事前の想定を超えた多くのトラブルが起こる可能性があります。極端な場合には、経営の屋台骨が揺らぐような事態に発展するおそれもあります。それだけに、事業を承継する候補者を定め、計画的に承継を進めることは非常に重要です。多岐にわたる事業承継の方法 一口に事業承継といっても、その方法は多岐にわたります。オーナー企業の場合、最も一般的なのは子どもなどへの後継を行う親族内承継でしょう。親族内承継は、社内外からの理解を得やすく、また後継者育成に時間をかけられる点がメリットとしてあげられます。他方で、後継者の候補者が限られたり、親族内に経営者としての資質が不足している人材しかいない場合には、親族内承継は難しくなります。 このほかの選択肢として、生え抜き社員の起用や外部からのスカウトなどによって後継を行う親族外承継や、株式上場を通じた適切な人材への後継、またM&Aを通じた社外への企業売却などもあげられます。親族や従業員などの人材リソースをみながら、自社に最も適した承継の方法を検討することが重要です。経営の承継と資産の承継 また、事業承継は、長期的な企業の存続・発展を図るため、経営の承継と資産の承継をともに行う必要があります。経営の承継とは、経営者の地位の引継ぎのことであり、企業の戦略や方針、また経営者としての心構えや業務の進め方などについての承継を行います。また、資産の承継とは、自社株やその他の財産を後継者に引き継ぐことです。特に、オーナー企業の場合には、経営者の保有する自社株をいかに円滑に引き継ぐかが重要なポイントといえます。 いずれにせよ、事業承継対策は10年計画で考えるべきともいわれており、長期的な目線で計画的に進めることが成功のポイントです。次世代経営体制への転換という意味で考えると、場合によっては10年では足りない企業もあるでしょう。経営者は、たとえ日々の業務に追われがちでも、早いうちから事業承継について検討する必要があります。事業を承継する後継者(親族、従業員、社外から招へい)を定め、計画的に承継を進めている3-7

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