104Chapter3Business Methods事業規模に合わせた組織体制 改善活動が無限に続くように、作業標準もできたその日からよりよいものへと見直しが始まります。業務分担や社内組織のあり方も常に最良のものを求めて柔軟に変更していくものです。顧客動向などの需要の変化に応じて、それにうまく適応できるように企業行動を変化させ、組織もそれに見合ったものに変化させます。 事業規模が小規模の段階では、生産・販売から企画管理までを1人で行い、生産と販売の機能も分離していません。事業規模が大きくなってくると、社長の直接管理が難しくなってきます。そこで、管理を行き届かせるために、生産と販売(ライン部門)を分離し、その企画・管理を行う部門(スタッフ部門)も分離させたライン・スタッフ制と呼ばれる組織へと衣替えさせるのが一般的です。しかし、大企業でよくみられることですが、スタッフ部門が肥大化して、本来ならば、ライン部門が行うべき仕事にまでスタッフ部門が進出して抱え込んでしまうことが起こります。すると官僚制化が進んでしまい、意思決定のスピードも格段に落ちてしまうのです。 このような弊害を除くには、組織をなるべくフラットにして、意思決定の情報の流れをよくします。同時に、小グループ単位で担当領域のすべての仕事について担当し、PDCAサイクルを回すことで完結するように担当職務を再編する必要があります。その際は一人ひとりが幅広い職務を担当することになるので、多能的な人材が養成されていなくてはうまくまわりません。また、このような組織にすることの目的に加え、具体的な命令系統や権限・責任の所在を従業員がきちんと理解することが重要です。効率化と管理のために命令系統や権限・責任を明示 ある大企業では、販売員個人にコンピュータ端末を持たせて、スタッフ部門で行っていた仕事を営業員に担当させています。また、工場部門においても、専門の生産管理担当者は配置せずに、現場の人間が在庫管理や出荷情報についても扱うなど、より効率的に業務を行えるように権限・責任を柔軟に変更しています。 このほか、命令系統や権限・責任が曖昧な場合、従業員による費用の不正な使用や過大請求などが生じる可能性も否定できません。業務の効率性だけでなく、内部管理をきちんと行うためにも、命令系統や権限・責任の明確化が求められるといえるでしょう。社内の命令系統や権限・責任が定められ、社員もこれを理解している3-3
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