101Case Study101戦略・経営者マーケティング組織・人材運営管理財務管理危機管理・社会環境・知財管理10の財務指標関連機関概要ぎるのも困りますし、逆に実力がないのに、あまりにも自信過剰である若者もおり、これも困ったものです。しかしながら、このような入職前後の認識ギャップは今に始まったことではありません。企業が丁寧に教えていく必要があります。つまり、人間関係や人材育成、仕事の与え方を工夫して、あわせて、企業の業績・将来見通しや労働条件の不十分な部分も皆が努力すれば良好なものに変わっていくことを展望として示すことによって、彼らなりの目標設定ができるようにすることが重要です。Step Up1 先輩従業員が後輩の面倒をみる仕組みをつくっている どんな仕事でも入社後3年間ぐらいは半人前が当たり前であることを理解させることがポイントです。残業が多いのに給料が安いといった不満がつい口に出ます。「一人前に働けているの?」「一人前ってどんな状態?」と自ら考えさせてみます。単に仕事のスキルだけではなく、顧客とのコミュニケーションがしっかりとれること、自分で調べ・考え・工夫して改善案を立案できること、ある程度の職域の仕事をこなせることなど、一人前になるまでには時間がかかることを丁寧に教えてあげましょう。新人担当の先輩を決めて、マンツーマンでやさしい仕事から難しい仕事へと面倒をみる仕組みが重要です。それも、入社3年間ぐらいはフォローする体制が必要です。2 先輩従業員に新人をどう指導すればよいかを 上司や社長自らが教えている 新人担当の先輩従業員を決めても、指導方法をまったく教えないのでは逆効果です。日本産業訓練協会や都道府県の職業能力開発協会ではTWI(監督者訓練)のJI(仕事の教え方)の研修を実施しています。社長自らが受けてみるとか、できれば指導者に受けさせるとか、受講が時間的・費用的に難しければ、市販のテキストを購入して、指導担当者を集めて勉強会をするとか、指導者自身が自己学習するように支援することがあってよいでしょう。そして、指導がうまくできた場合には指導役の先輩従業員にも表彰を与えるなど、ほめて育てる部分があってもよいでしょう。中小企業だからこそできる細かい気配り Case1 A社では、採用内定書や誓約書といった書類を整備している。友人である大企業の社長から書式をもらって真似している。町工場でこうした書類を整備しているところはなく、高校の先生にも感心された。(鋳物/ダイカスト製品製造・20人) Case2 鍛造は高温の金属を鍛えるので職場はかなり暑く、作業は時間が勝負のため先輩職人の言葉遣いはつい乱暴になってしまう。こうした職場環境になじめない若手が去っていくことが、B社の悩みだった。そこで始めたのが社内の「学校」だ。狙い通り新人が辞めることはほとんどなくなった。同社はカリキュラムが終わるごとに受講生に「修了証」を手渡している。終了証には校長と理事長の大きな赤いはんこが押され、額に入れるというこだわりようだ。(超合金他特殊鋼鍛造・94人) Case3 C社では、技術の核になる人はコネを使ったり、ルートを使ったりして探している。技術者は普通に募集しても集まってもらえる。人を集めるためにも、企業を魅力あるものにしなければならないと社長は強調する。(振動計測装置製造・23人)
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